2011年3月9日水曜日

同僚性を高めるために

先日、大学院の実習でお世話になった先生にメールを頂きました。
その中で僕の書いた大学院でのアクションリサーチの報告書でふれた、「同僚性」に関しての感想、具体的な事案を求められました。

いい機会だと思い、同僚性ついて自分が調べたこと、学んだこと、思っていることをまとめて、先生にも読んでもらうことにしました。
ちょうど「英語教育」2010年12月号(大修館書店)で同僚性の特集をしていたので、その記事を読んで知識も深めていきました。

以下がその文章です。

先に断っておきますが、僕は4月から教師としての生活をスタートさせます。
他の人より実習(学部、大学院で計半年ほど)はしていますが、それでも現場での経験知はまだまだ少ないです。
そんな自分のことを棚に上げてしまったような文章になっています。すみません。
(まあトピックが「同僚性」なのでしょうがないといえばしょうがないのですが…)

ただここにまとめたことが実践できるよう、自分自身へのいわば「アドバイス」としてしっかりと胸にとどめておくつもりです。


------------------------------------------------------------


同僚性を高めるために必要なこと


0.はじめに

 本稿では、学校における同僚性を高めるために私が必要だと思うアプローチを、①授業改善の視点、②教科を枠を超えた視点、③新任(若手)教師の実践という視点という、3つの視点から述べていくものです。


1.授業改善を通して同僚性をはぐくむ
 同じ教科の教師どうしであれば、授業改善を通して同僚性をはぐくむことが考えられます。授業をより良くしていくそのプロセスの中で同僚性が高まっていくことを、以下英語の授業改善を例にとってみていきます。

1.1.明確な目標設定を行い、それを共有すること
 同じ教科の教師どうしで、年間の目標設定をすることが大事になってくると思います。どのような力をどこまで1年間で生徒につけていくかを話し合っていく過程で互いの教育観が垣間見え、同僚性を高めていくことにつながると思います。また、年間目標達成のために必要な小さな目標も、適宜話し合うことでより教科内のビジョンがはっきりしていくのではないのでしょうか。

1.2.授業を公開すること、授業を参観すること
 授業改善のためには、自分の授業を公開し、授業を参観することが必要とされると思います。自分の授業を公開していくと、自分では気付けなかった改善点や自分のいいところを知るチャンスとなりますし、違う教師の授業を参観するとそれぞれ異なった考え方に触れることができ自分の指導のバックボーンが強化されます。
 ちなみに、授業を参観する際の注意点として、授業の背景をおさえて参観に臨む必要がある、ということがあげられます。例えば参観する先生方に「今日の授業のねらいは○○で、それは本課の目標でもある××に準じたものになっています。しかし前時にスピーキングの練習時間が個人的にはあまり持てなかったと思うので、今日の授業では、特に英語を話す場での生徒の様子に注意して見ていただけたらと思います。」のようなアナウンスがあるのとないのとでは、その授業に対するフィードバックの質が大きく変わってきます。このように授業公開、授業参観は授業者と観察者との有機的な関わり合いが必要なのだと思います。

1.3.指導法でつながる
 授業公開、授業参観を行うと指導法のバリエーションが広がっていくと思います。自身、「この教え方は自分の授業で使える、使ってみたい」と思ったこと、そして実践したことが何度かあります。
 ここで大事なことは新しい指導法を試した後に、どういう結果になったか等のフィードバックを含めて教師どうしで情報を共有することにあると思います。そうすることでその指導法の良い部分や改善点がよりはっきりと見えてくるようになると思います。そのことが同僚性の向上に寄与するのではないのでしょうか。

1.4.教材でつながる
 授業で用いたワークシートや資料等を教師どうしでシェアすることも一手段だと思います。ワークシートや資料を共有できるような状況にあると、そこから新しいアイデアが浮かんできたり、そのワークシートを発展、改善できたりすると思います。

1.5.テスト作成や評価でつながる
 テスト問題作成に関して、事前に共通したイメージを持つことはそのテストの信頼性を高めること、またその後のフィードバックの質を高めることにつながります。そのために協議することは同僚性の向上にも関連していると思います。例えば、英作文問題の評価基準をどのように設定するのかについて、教師どうしで簡易なルーブリックを作成することにすると、教師のテストに対する共通意識が高まっていくのではないのでしょうか。


2.教科の枠を超えて同僚性をはぐくむ
 同じ教科の教師どうしの同僚性ももちろん大切ですが、教科の枠を超えた同僚性というのももちろん必要です。「職員室の雰囲気を見れば、その学校がうまく運営されているかどうかがよくわかる」という言葉もあるように、学校内の教職員全体を巻き込んだ同僚性というものを高めていくことが求められていると思います。以下、そのための取組みの一例として考えられるものを示していきます。

2.1.授業を公開すること、授業を参観すること
 1.2.でも述べた授業公開、授業参観ですが、教科をまたいだ形で行うことも非常に大きな意味を持つと思います。それぞれの教師で異なる教え方の工夫を見ること、そして他の教科を学ぶ姿から生徒のいつもとは違う一面を見ることは2.2.で述べる教師どうしのコミュニケーションを通した同僚性の向上につながっていくと思います。
 ○○中学校(実習校)では、担当する教科以外の教科の授業にもT2として授業に参加する体制があります。このような指導の形は非常に有効だと思います。特にサポートが必要な生徒への対応だけでなく、授業全体に関してT1が気づかなかった点もT2は気づいている、という場合、それが同僚性を高めるようなコミュニケーションを促進することも考えられます。

2.2.共通するトピックで話し合う機会を持つこと
 日常的な生徒理解や生徒指導など、生徒に関連したトピックについて話し合う機会を定期的に設けていく、ということも同僚性の向上には必要なことだと思います。同僚性が高まっていけば、2.1.でも述べましたが、自分では気づけない生徒の一面を知る機会が多くなると思います。


3.新任(若手)教師が同僚性をはぐくむ
 私は、新任(若手)教師の同僚性向上のための役割は、「現場を(いい意味で)かき混ぜる」ことだと考えます。4月から教育現場に出る身として、新任(若手)教師が同僚性を高めていくための手立てを以下にまとめてみました。

3.1.積極的に質問する
 4月から教師になる、といっても最初のころはわからないことだらけだと思います。「わからないことはしょうがない。どんどん先輩の先生方に聞いて解決を目指そう」という認識に立ち、積極的に質問をすることが大切だと思います。ただ、気をつけなければならないのは、わからないことを開き直るという認識のみが先行してしまい、自分の考えを持たないことだと思います。ある先生に「質問に来てもらうことは大歓迎です。そのことが自分たち先輩教師の議論の種になることもあるので。でも、ただ聞きにくるのではなく「自分はこう思うのだがどうか」というスタンスでいた方がお互いの勉強になる」という言葉を頂いたこともあります。私も、自己を研鑽するということのためにどんどんと質問をしていきたいと思います。

3.2.同僚教師のパイプ役になる
 3.1.で述べたように新任(若手)教師はわからないことについて積極的に質問することができます。もちろん特定の先輩教師だけに質問をする、というわけではないですから、多くの先輩教師の考えを聞けることになります。ここで、自分を仲介役にして「A先生は○○という項目を指導することについて××というアイデアを出していただきました。B先生はこのことについてどうお考えですか?」といったように頂いたアイデアを連鎖させていくことができるように思います。先輩教師の方々の考え方をつないでいく、このことも新任(若手)教師はやりやすい立場にいるのかなと思います。

3.3.いろいろな企画をする
 今までは学校教育活動を行う場面においての同僚性の高め方について述べてきましたが、それ以外の場面でも先生と先生をつなぐ場を設ける、ということも必要になるかと思います。若手のアクティブさでレクリエーションや飲み会などをアクティブに企画していくということも一つの方法として考えられます。


4.おわりに
 最後に、これまで同僚性を高める方法について自分なりに整理して述べてきましたが、同僚性の向上はそれ自体が目的ではなく、その本質は生徒により良質な教育活動をしていくこと、生徒の健やかな心身の成長や学力向上のための土壌づくりにあると思います。生徒は教師の背中を見ていろいろなことを学ぶと思います。その教師がいる環境、つまり同僚性の程度により生徒が見る「教師の背中」も変わってくるのでは、と私は本稿を書きながら感じました。生徒がより多くのことを学びとれるような、そんな良好な同僚性をこれから私も意識して築いていかなければ、と感じました。

0 件のコメント:

コメントを投稿